中小企業経営者様のIT経営相談室

中小企業経営者様に役立つITや経営に関わる情報を発信していきます

二つのグループを比較、差は本当にあるか?

f:id:jmjunichimaeno:20200906164244p:plain


ビジネスの現場で2つのグループのデータに本当に差があるのかどうかという検証はよくあることだと思います。

 

例えば、2つの工場の不良率の差から品質管理の優劣さを見る、2つの店舗の売上高の差から営業方法の優劣さを見る、2つのクラスのテストの点数から教育効果の差を見るといった場合などです。

 

不良率・売上高・テストの点数に開きがあったとしても、それが2つのグループの決定的な能力差によるものなのか、または実は能力差がなくても、その程度の差の開きはよく起こりうることなのか、を検証する必要があります。

 

ここで、2つのグループには各々品質管理・営業方法・教育効果以外の差異はないという前提で話を進めます。

 

結果として出てきた不良率・売上高・テストの点数が実は偶然の結果であるのもかかわらず、それが品質管理・営業方法・教育効果によるものだと思い込んでしまうと誤った判断をくだすことになります。

 

では、2つのグループの差が偶然の結果によりもたらされたものか、そうでないかを見極めるにはどうしたらよいでしょうか?

 

それには2つのグループの母平均の差の検定を行います。

 

母平均というのは、2つのグループ各々の平均ということです。

 

例えばA工場から100個の製品をサンプルとして取り出し、その不良率を検定したとします。

 

取り出した100個の不良率はあくまでサンプルの不良率ですが、母平均はA工場全体の不良率ということになります。

 

これが母平均ということです。

 

知りたいのは、A工場とB工場の母平均にそもそも差があるのか、つまり品質管理のレベルにそもそも差があるのかということです。

 

A工場から取り出した100個の不良率とB工場から取り出した100個の不良率から、母平均の差の検定をします。

 

これはExcelでも行うことができます。

 

詳しくは次回の記事で紹介しますが、”t検定”といわれるものを利用することで検証することができます。

 

ここでは、t検定のような統計的仮説検定を理解するため、帰無仮説の概念だけお話します。

 

帰無仮説とは以下のような論理です。

  1. カラスは白いものである(帰無仮説)
  2. 黒いカラスが10羽連続して出現した
    0.5×0.5× 0.5×0.5× 0.5×0.5× 0.5×0.5× 0.5×0.50.000976563
  3. 有り得ない確率が出現した
    →仮説が間違え(帰無仮説を棄却)
    →対立仮説を採用
    →カラスは黒いものである

 

今「カラスは黒いものである」という事実を検証したいとします。

 

そこで、これと正反対の論理、「カラスは白いものである」という論理をまず立てます。

 

この「カラスは白いものである」という論理を統計的に否定することで、逆説的に「カラスは黒いものである」という事実を肯定するというのが、統計的仮説検定になります。

 

「カラスは白いものである」という論理は、否定されるため、つまり無に帰する、という意味で帰無仮説と呼ばれます。

 

帰無仮説を棄却して、その対立仮説「カラスは黒いものである」という論理を採用するということになります。

 

上述の例では、黒と白のカラスが50%ずつ存在すると仮定して、たまたま出会った10羽のカラスが全て黒である確率を求めています。

 

その確率は1000分の1以下です。

 

そこで次のように考えます。

 

そんな小さい確率でしか起きないはずのことが実際におこった。

 

⇒これは、そもそも「黒と白のカラスが50%ずつ存在する」なんていう仮定がおかしい
⇒だから、やっぱりカラスは黒だ

 

ということになります。

 

工場の例に戻りますと、「A工場とB工場の母平均には差がない」(帰無仮説)という仮説を立て、これを検定の結果、棄却し、「A工場とB工場の母平均には差がある」(対立仮説)を採用し、両者の品質管理にレベル差があることを立証するという手順になります。